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物やおもふと 人のとふまで LG

久々にssを更新しますー。
つってもやっぱりサイトにあったものだけど。ちょこっと修正したダケですけど…。

恋心ジャンさんのおはなしですー。
続きからどうぞ









煌めく光の渦の中心で、艶っぽい笑顔を振りまきながら嘘物の愛の言葉を囁くあんたは、傍から見ててもすげえ格好良い。
喧噪の中でだって一際目立つ完璧な容姿に雄の匂いを纏わせて、ここにいる全ての女があんたを見ている。
次は私にお声がかかるんじゃないかしらなんて、仄かな期待を抱きながらホラ、またあんたの横をしなやかな歩みでこれ見よがしに過っていく。

高級感を貼りつけてあるみたいなふかふかのソファに沈むように座りながら、俺はぼんやりとそれを眺めていた。
頭では仕事だと分かっていても、紅いドレスの腰元に回された腕を見るたびに少し胸が痛む。昨夜は散々その熱い手のひらで俺を可愛がってた癖に。

何とも言えない苦い思いを噛みしめて、俺は出されたウイスキーを一気に呷った。喉が焼けるようなアルコールの刺激が、こんな女々しい考えを押し流してくれるのを少し期待して。
「ダイジョーブ?随分ペースがお早いんじゃない?」
隣に座った整った顔立ちの女が、むせ返るような香水の匂いのする体を近づけ、柔らかな乳を腕に押し付けてきた。
語尾を伸ばして媚びるように喋る女は、さっきから過剰にボディタッチを繰り返していて、その分かりやすいお誘いの仕方に俺は少し辟易していた。
以前ならこういうのは大歓迎で、据え膳は残らず全部頂いちゃうのが当たり前だった。
けれどルキーノと体を重ねるようになって、何だか俺はうまくそれをこなす事ができなくなっちまった。別にインポになった訳でもないのに。
でも、あの鋭い眼差しに射抜かれるように見つめられながら体を開かれていく感触がいつまでも消えてくれなくて、脳に直接届くみたいな低い音で俺の名前を囁くあの声がいつまでも体の中に残っていて、いざ女とあれこれしようと思っても、果たして俺は男の役割をきちんと果たせるのか正直自信がない。
まるであんたじゃなきゃ駄目みたいな体になっちまったことが妙に恨めしくて、俺は女に向けてへらっと笑ってみせると、そのついでに向こう側に見えるルキーノをこっそりと睨みつけた。

俺をこんな風にしやがって。そう言ってやりたいけど、女たちに囲まれて颯爽と人の波を渡り歩いてるあんたを見ていると、喉元まで出かかってる言葉が意気消沈、するするとまた腹の奥に戻っていく。
だってあんたは……そうやって立っているだけで圧倒的な存在感を放っていて、やっぱりカッコイイよなあ、って妙に俺を納得させちまうんだ。

ふと俺の視線に気づき、ルキーノが薄っぺらい笑顔をこちらに送ってきた。
その他大勢の女に与えてるのと全く同じ表情。
得意げに口角を引き上げ、少しだけ目を細めるその顔。ほんの数秒俺を見て、外される。
――ベッドの中じゃあんなに性急に求めてきてたのに。
あの時の熱っぽい視線とは全然違うその瞳の色に、それでも不本意ながら俺は少し動揺してしまった。
赤くなってしまった顔を、飲みすぎたと誤魔化して俺はトイレに立った。途中でちらりとルキーノがこっちを伺った気がしたけど、どんな顔を向ければいいのか分からなくてそれを無視した。

トイレに入るなり俺は洗面台に直行し、勢いよく水を出して顔を洗った。
後でルキーノに怒られるかもと思ったが、拭くものがないのでシャツの裾でごしごしと水滴を拭う。冷たい水の感触が少しだけ気分を晴らしてくれるような気がしたけれど、鏡に映っている自分の姿を見たら思わずため息が出そうになった。

(なんつー顔してんだろ俺…)
不安げに垂れ下がった眉、絵に描いたような仏頂面。これじゃ女にモテないよねー、なんて、一層落ち込むような考えが頭を過る。
他の奴に向ける顔を俺にするルキーノは何だかムカつく。その他と俺を一括りにされているみたいで、自尊心を酷く傷つけられたような気がするからだ。
俺はルキーノを相棒だと思っているし、ルキーノも俺を立派なボスにすべく支えてくれている。
けれど二人の間には誰にも言えない秘密が潜んでいて、俺たちはそれに明確な名前をつけちゃいなかった。
そいつが時々顔を出してきては、今みたいに俺をちくちく攻撃してきやがるんだ。

あなたの特別になりたいのなんて、安っぽい台詞を呟いてみればいいんだろうか。
けれどルキーノの中には既に他の特別が存在しているのは俺も理解していて、だからこそ俺は自分の立っている場所がひどく不安定なものに思えて訳がわからなくなってくる。
それでも、あんなに熱く俺を求めて、何度も俺の名前を呼んでいたのにと思うと、その落差にまた胸が苦しくなってくる。
俺、もしかして既に肉俸管理されてんのか?鏡の中の俺は、何かを訴えかけるように困惑顔をしていて、俺はそれが悔しくて鏡をコツンと軽く叩いた。

フロアに戻ろうとトイレの扉を押すと、こちら側の力の入れ方を越える勢いでドアが開いた。
予期せぬタイミングに俺は体勢を崩し、前方につんのめってしまう。向こう側に現れた男が胸でそれを受け止めてくれたお陰で転びはしなかったが、肩から体当たりをかましてしまった。
「すんませ…って、何だあんたか」
俺よりもかなり高い位置にある顔を見上げて謝ろうとすると、見慣れた顔があった。
ルキーノの方も扉を開けた途端いきなり俺がぶつかってきたので、少し驚いたみたいだ。俺は体をどけて、ルキーノを室内に入れてやった。
「飲み過ぎたのか?顔が赤いぞジャン」
「ンー、まあ、ちょっと?お仕事はしっかりやるから心配ないわよん」
そう言って俺は手をひらひらと振り、扉に向き直す。今はあんたの顔ちゃんと見て話できそうにない。それを悟られる前に、早くここから出ていきたかった。
自分でも女々しいって分かっているだけに、今はそれに蓋をしてシカトを決め込んでおくことしかできない。本当俺って、かっこわる…。

扉に手をかけると、ぬっと顔の横に太い腕が現れた。素早い動きで体を梗塞され、何が起きたか頭が理解するより早く、トイレの個室に連れ込まれる。
壁側にどん、と体を押しやられ、ルキーノの後ろでかちゃりと鍵がかかる音がした。
「…俺もう用足しましたけど」
何とか皮肉を捻りだし、俺は苦笑いを向ける。
こんなことでも言わないと、ヘンな台詞をあんたに投げつけそうだ。その、ちょっとだけ感じてる、嫉妬みたいなものを。
俺の顔のすぐ横に手をついて、ルキーノの体が近付く。俺はその体が落とす陰にすっぽり包まれた。
「何か言いたげな顔してるじゃないか。それとも、物欲しそうというべきか?」
「…っ誰が…。シニョーレ、視力が落ちたんではなくて?」
動揺を隠しきれず俺は、つい視線を反らしてしまう。クソ、得意なはずのへらへらした笑顔も、今日はいまいち冴えないでいるのが自分でもわかる。
物欲しそう、とか、ああ、ずばり言い当てられた感がぬぐえない。今の俺はまさに、あんたを欲してるんだって、その言葉で嫌でも自覚しちまう。
煌びやかなライトの下に立つあんたの姿、俺はそれを独り占めしたいだけなんだ。まるで恋を覚えたてのガキみたいに。
――忍ぶれど色に出りけり――以前ベルナルドが言っていた気がするが、まさしく俺は今そんな状態なのかもしれない。
けれどそれをそのまま投げつけられるほど、もう俺は分別を知らない子供じゃない。そもそも自分の中にそんな感情が湧きあがることさえ耐えがたい。
ぐちゃぐちゃした思考は好きじゃないんだ。いっそあっさり健全なおホモダチとして(ホモが健全かは置いといて)、欲望を吐き出すだけの存在であれば楽なのにと思う。
だからこそ俺は、この矛盾すら生じている感情を、無視してはぐらかす以外の手段が取れないでいる。

「言ってくれるな、ジャン。だが俺は視力はいいんだぞ?離れて座ってるお前が熱っぽい視線を送ってくるのに気付くぐらいにはな」
そう言ってルキーノは、そのごつい手で金髪をやさしく撫でた。手のひらが頬に触れ、そこで止まる。
ルビー色の瞳のなかに俺だけが映り、満足感がじわじわと広がっていく。
俺が必死で困惑と戦っているというのにこの男は、どうしてこう欲しいと思っている言葉をあっさりと投げかけてくるのだろう。その手に優しく触れられて、はっきりと嬉しいと思ってしまう自分が本気で情けなく思える。俺はいったいいつからこんなに乙女思考になったんだ?

「俺が欲しくて、見ていたんだろう?ジャン」
耳元でそっと囁かれて、俺は体中の血が一瞬で湧き上がるのが分かった。意地悪く俺を射抜くその目つきに、ぐるぐるとアレコレ考えていた俺の脳みそは馬鹿みたいに溶け始める。
あんたがこうやって何度も俺を溶かしちまうから、また俺は抗えなくなる。感情が完全に理性を置き去りにしてしまう。あんたを求めて、欲して、隙間なんかなくなるくらいに俺でいっぱいにしてやりたくなってしまう。
俺があんたにそうなってるのと同じように。

そっと見上げると、ルキーノは先ほど見せた上っ面の笑顔じゃない、真っ直ぐな視線で俺を捉えた。仄かに欲情の香りを漂わせながら。
ぞくぞくと背中から歓喜を呼び起こすあんたの仕草。それが全て、俺は欲しいんだ。

俺は顔の真横に置かれた腕に、するりと指を絡ませ、わざとらしくしな垂れかかりながら問いかけた。
「…随分自信がおありのようだけど、では今アタシが何を求めているのか、もちろん分かって下さるわよね?」
「当たり前だ。その潤んだ唇を、今すぐ塞いで欲しい、だろう?」
そのままルキーノは厚い唇を押し付けてきた。下唇を強く吸い上げられ、舌先が内側を刺激する。
蹂躙されていくその感触が心地よくて、ずっとそのキスを続けていたくて、俺はルキーノの肩に腕を回した。

ホールでは軽快なジャズが流れている。微かに届くその音を聞きながら、俺はいつまでもキスの雨を受け続けていた。
痺れる頭を抱え、細切れになっていく呼吸音の中で、再び見たローズピンクの瞳には、やはり俺だけが映っていた。

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